フルタイムで仕事をしている場合の障害年金の受給

文責:所長 弁護士・社会保険労務士 長谷川睦

最終更新日:2024年10月23日

1 フルタイムで仕事をしていても障害年金が認められる場合がある

 ご相談を伺っていると、「フルタイムで仕事をしていると障害年金がもらえないのか」というご質問をいただくことがあります。

 結論としましては、障害年金の受給が認められる場合はあります。

 こちらのページでは、フルタイムで仕事をしている場合でも障害年金の受給が認められる場合と、反対に受給が難しい場合等についてご説明いたします。

2 フルタイムでも障害年金の受給が認められやすい場合

 障害年金は、日常生活や仕事への支障があり、その支障の程度について、日本年金機構が定める基準を超えると判断された場合に受給が認められるものとなっています。

 この基準の中には、比較的基準として明確なものがあります。

 例えば、「一下肢の3大関節中1関節以上に人工骨頭又は人工関節をそう入置換したものや両下肢の3大関節中1関節以上にそれぞれ人工骨頭又は人工関節をそう入置換したものは3級と認定する。」という基準があります。

 この基準では、さらに症状等が重い場合には上位等級に認定するともされていますが、人工股関節等のそう入置換の事実をもって3級と認定しているといえます。

 その他、視力、視野等の検査数値をもって等級を定めているものなどもあります。

 こういった、検査数値によって等級を定められているものなど、比較的基準として明確な傷病については、仕事への影響は一定程度以上あるものという前提で障害年金の受給が認められているといえます。

 このような傷病の場合は、フルタイムで働いているか否か等はあまり問題とされずに受給できる場合が多いかと思います。

3 障害年金の受給が比較的難しい場合

 障害年金認定基準の基本的事項として「障害の程度」という項目があり、この項目をみると、2級は「日常生活が著しい制限を受けるか又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のもの」「労働により収入を得ることができない程度のもの」等と記載されており、3級では「労働が著しい制限を受けるか又は労働に著しい制限を加えることを必要とする程度のもの」と記載されています。

 そして、明確な基準を定めるのが難しいような傷病では、おおむねこれらの文言をもとに2級、3級等を判断します。

 例えば、平衡機能障害や、脳損傷に伴う損害(高次脳機能障害)、精神疾患、難病等は、具体的な基準を定めることが難しく、総合的な判断とならざるを得ません。

 そうなると、判断材料の1つとして、実際の就労状況も考慮されることになってきます。

 この結果、「フルタイムで働いている=就労に影響がないもの」と判断されてしまい、障害年金の受給が認められないという傾向が強まっていきます。

4 フルタイムで仕事をしている場合における申請時の注意点

 上記3のとおり、総合的な考慮がされるような傷病については、フルタイムで働いていることは障害年金の審査に影響を与えるものといえます。

 もっとも、実際にはフルタイムで働いている方でも受給が認められている事案はあります。

 なぜなら、フルタイムで働いている=就労に影響がないとは本来断言できないからです。

 例えば、勤務先が傷病の状況を踏まえて部署や業務等を配慮してくれることもあるでしょう。

 リモートワーク等の仕事の仕方で対応している方もいると思います。

 周りの同僚の方等の強力なフォローを受けることができ、なんとかフルタイムで働いている方だっています。

 障害年金の認定にあたっては、こういった状況も考慮されますので、申請の際には、単に「労働契約上フルタイムで働いていること」や「給与明細等で十分な収入がある」という書類だけでは見えてこない事実もしっかり訴えておくことが大切になってきます。

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